ヤマネコ目線

大体独り言、たまに写真その他、レビュー等

野原ひろしハイスペ論に覗く深淵

 書き散らし。Twitterで見かけた「野原ひろしみたいな男で良いのに全然いない」という話、あれはもはや釣りレベルとして、改めて考えると恐ろしい。

一例に過ぎない

 野原ひろしがよく例として挙がるのは今の20代30代が子供の頃に見てきたアニメの登場人物だからであって、引き合いに出されるのは理解できる。年収などの詳しいスペックが公開されているのも比較しやすい理由だろう。かつては「うだつの上がらないサラリーマン」像だったのが、今や「ハイスペ男子」。こういったキャラクター像の変遷は一例に過ぎず、これからもどんどん起こり得る。

 たとえば今、放送されているアニメ等の作品、そこに登場する「ごく一般的な家庭」、10年後20年後には「裕福な家庭」になっている可能性が大いにあると私は思う。たとえば私の世代であれば「家の冷蔵庫にハーゲンダッツが常備されている家は金持ち」という印象だが、それが10年20年すると、下手すれば「家の冷蔵庫にアイスクリームがあるなら金持ち」になっているかも知れない。要は”裕福”のラインがどんどん下がって行く。いや、現在進行系で下がって行っている。

これによって起こり得る悪影響

 私は20代後半なのでもろに野原ひろしと比較され得る当事者であるが、そういった「一般的な家庭」の描写と現実の乖離による悪影響はおよそ察しがつく。日本社会はこれから先ずっと下り坂なのが見えており、要は子供の頃が一番良かった時期、大人になる頃には子供の頃に思い描いていた「普通の幸せ」が手の届かない遠い位置にある訳で、多くの人間は大人になるとそこで心が折れてしまう。少子化、晩婚化、若者の~離れと言われて久しいが、その根底には現実への失望がある。無欲にならなければ生きていけない時代。「親を超える」ではなく「親って凄かったんだ」と言う時代。アニメ等における家庭描写が悪いとは言うまい。しかしそういった描写によって子供の頃に刷り込まれた価値観が、大人になるにつれて現実には全く即したものでなくなって行く。それによって現実を受け入れられず心を病む、あるいは逃避する人間は増えるだろう。

 私はおそらく結婚も出来ないし子供も作れないだろうが、それはそれで今は良いと思っている。世の中を観察すればするほどこれから先は暗い。もはやこれから先の社会を生きていかなければならない子供が可哀想にすら思う。負け惜しみと言われれば負け惜しみだがこの先、所帯を持つなどそれに相応しい人間だけがすれば良い。