ヤマネコ目線

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ようやく米作りをやめる

 ようやく実家が米作りをやめる。それなりの年数を手伝って来たが本当にようやく辞められるんだという気持ちで一杯だ。正直残念さも少しはあるが、私にとっては嬉しさの気持ちが大きい。

好きでやるならともかく

 家は兼業農家で、小学生の頃から農・林業を手伝って来た。これが私にとっては苦痛だった。山も農地も良い場所にある訳ではない。特に優れた木材の産地でもなければ、平坦で広くて真四角な農地でブランド米を作っている訳でもない。ただただ金にならない労力ばかりを積み上げて来た。それも気候が良い時期の休みの日に限って手伝わされる。友達と遊ぶような機会だって数え切れないほど犠牲にして来た。気候が良い時期に家族で旅行など行った事が無い。行けたとしても真夏か真冬。社会人になってからつくづく思うがQOLが低過ぎる。何のために生きているのか分からなくなって来るレベルで低い。特に夏場、炎天下での肉体労働などはアトピー持ちの私にとって本当に苦痛でしかなかった。そもそも人間として生きるのに向いていない……のは別として。

 世の中のすべてが金とは言うまい。しかし労力に対して得られるものが少な過ぎる。海外では一次産業は安全保障に直結するため、収入のほとんどが補助金というレベルには補助金が多い。日本では全くそんな事はなく、減反政策もあって米づくりなどはブランド米を大量生産するでもない限り、やるだけ損でしかない。少なくとも私にはそうとしか思えない。先祖代々受け継いで来た土地と言えば聞こえは良いが、私にとっては呪いのようにしか思えなかった。

 損をするのは金銭面だけでなく、前述したように季節によってはプライベートが大幅な制限を受けるし、草刈りだの何だのと維持管理にかかる労力も多い。「農家なんて植えて育つの待つだけで楽そう」、などと抜かす人間はまとめて耕運機で肥料にしてやりたいくらいには労力が多い。それも技術的なものではなかなかどうにもし難い労力であって、革新的な技術があればとかそんな種類の労力では無い。技術さえあれば何とかなるものであっても、そういったテクノロジーを使うためには結構なお金がかかる。それを出せるような懐の深さは弱小農家には無い。今流行りのドローンだって農薬散布に使えるようなものは100万以上する。

 何にせよもう人手が足りない。大昔ならいざ知らず、今、誰かを雇ってまで農林業が出来るのはそれなりに儲けを出せる所だけだ。あるいは家族労働で、家族の労働に対する賃金をゼロに出来る所か。

これからの日本の農業

 政府は一次産業を疎かにしている。というより科学でも何でもとにかく肝心な部分が蔑ろにされている。日本の衰退は起こるべくして起こっていると言わざるを得ないレベルで、この国はどこかおかしい。力を入れる部分が、金の流れが明らかにおかしい。この先、日本の一次産業はどんどん衰退して行く。いや、衰退して行っている。私が住む地域でも耕作放棄地が目にみえて増えて来た。耕作放棄が悪い事とは言うまい。持ち主が悪いとは言うまい。そうせざるを得ない、やってられないからそうなっているのであって、当事者を責めるべきではない。食料自給率が低いのにこの先、一次産業が衰退して行けばどこまで行くのだろうか。ある意味、見ものだ。

 稲作したいって人がいるならいつでも田んぼ売ってやるぞ!