ヤマネコ目線

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白いキノコは死の味わい

 書き散らし。通称「死の天使」、「破壊の天使」と呼ばれるキノコが増えているという。キノコは今どきスーパーで安く確実に安全なものが買えるのだから、わざわざキノコ狩りに行く必要はあるのだろうか・・・楽しいんだろうけどその楽しさとリスクが釣り合わん。

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 少し前はカエンタケで騒いでいたような気がするが、今度は更にヤバイヤツが出て来た感がある。

 カエンタケは触れただけで毒性があるともされ致死量もわずか3gとそれはそれでかなり危険なヤツなのだが、まだ見た目からして毒がありそうというか、キノコらしいキノコでもなく食う気にもなれない見た目をしているのがまだ良心的。そう、御三家に比べれば。

猛毒キノコ御三家

 猛毒キノコ御三家とされるのはドクツルタケ、タマゴテングタケ、シロタマゴテングタケの3種。これらはいずれも白かそれに近い色をしている。タマゴテングタケは傘が白っぽくは無いが、逆にいかにも食欲をそそるキノコらしい見た目、キレイな傘をしている。それが逆に恐ろしい。

ドクツルタケ

 ドクツルタケは致死量こそカエンタケよりも少ないとされるものの、それでも1本食えばほぼ死ねるとされるので危険性は変わりない。それより怖いのはその症状で、上のリンク先の記事にもある通り食べた直後に出る症状は1,2日で一旦はおさまってしまう。しかし、1週間~10日くらいすると重篤な症状が急激に発生してそのまま死亡する。一旦症状がおさまっている間に毒の成分が肝臓や腎臓を破壊、他の臓器に必要なタンパク質の合成が行えなくなり、多臓器不全で死亡するとされる。1週間~10日くらいの死刑執行猶予がさながら「親しい人に別れを告げる時間を与えているかのよう」だから死の"天使"なのだろう。

 過去の事例を検索するとどうも「毒キノコは茄子と一緒に煮れば毒が消える」、との迷信を信じて調理して食べた人が普通に死んでいる。そういう迷信を信じるのはやめましょう。消えるのは毒ではなくお前の命

タマゴテングタケ

 タマゴテングタケ「世界でもっとも有名な毒キノコ」としてギネスブックにも載っている。傘は生え始めがキレイな白、大きくなると茶色のいかにも美味しそうなキノコ。ヨーロッパでは「Death Cap(死の帽子)」とも呼ばれ、もちろん猛毒で症状もドクツルタケに似ている隙を生じぬ二段構え。ただ主な分布範囲がヨーロッパ、日本では北海道で希に見つかる程度らしいのがまだ救い。冷涼な気候が合っているのだろうか。だとすれば温暖化で分布範囲が広がる心配はあまり無いだろう。

 なお、アマトキシン類一般的な加熱調理程度では分解されない。火を通せば安全になるタイプの毒もあるがこいつは違う。加熱したから安全とかそういう生半可な考えの人間を確実に殺しに行くスタイル。というかお察しの通り、こういう毒キノコは御三家に限らずどれを食べても近縁種なら大体おなじような症状で死に至る。毒成分がそう変わらないので。

シロタマゴテングタケ

 ドクツルタケ同様の「死の天使」と言った異名を持ち、新潟県では「イチコロ」と呼ばれるという猛毒キノコ。基本的にはタマゴテングタケの白いver.みたいなもん。クロタマゴテングタケもあるよ!というか、御三家とは言うものの有名かつどれも白(っぽい)というだけで、猛毒キノコだけでファミリーだとか戦隊モノだとかが作れそうな感じはする。

 余計な話ではあるがタマゴタケは毒キノコっぽい赤い外見に反して食用にできる上に美味らしい。キタマゴタケも食用に出来るらしいがタマゴテングタケとの誤食が多いらしいので、どうしても野生のタマゴタケ類が食べたいと言うのならせめて赤くて見分けがつきやすいタマゴタケに絞るべきな気はする。この記述を鵜呑みにして毒キノコを食べたとしてもその責任は一切負いません。野生のキノコを食べるなら自己責任でお願いします。というか死にたくないなら野生のキノコ食べるな。

誤食しやすい毒キノコ

 ここまで普通に1本で死ねる系の御三家について書いたが、それ以外に誤食しやすい毒キノコもある。

クサウラベニタケ

 通称「名人泣かせ」、「偽シメジ」。その名の通り名人でも間違うほど姿がころころ変わる厄介な毒キノコ。御三家はまだ見分けが付きやすいレベルだがこいつは間違って販売・流通することもあるとされるほどの変装の達人。調べた限り猛毒という訳でもないようだが、毒=毒成分の強さ×量なので食べても死なない保障などどこにも無い。

www.mhlw.go.jp

カキシメジ

 これも誤食の多いキノコ。チャナメツムタケという食用キノコに似ている。確かに厚労省のページ、湿っている時の写真を見るとかなり似ていることが分かる。毒成分のウスタル酸(ウスタリン酸)は水溶性であるため、キノコそのものは当然だが煮汁などをどれだけ飲んだかで症状の出方が違うらしい。今のところ死亡例は無い。

www.mhlw.go.jp

ツキヨタケ

 地方によっては「毒あかり」「光だけ」とも呼ばれる毒キノコ。その異名の通り暗闇で目が慣れれば光って見えるという。ただし、光るのはヒダだけでそれも新鮮なうちだけらしいので採取して時間が経つとおそらく見分けるのは難しいだろう。

 そしてこいつは似ている可食キノコがそこそこある上に死亡例がある。主な毒成分であるイルジンSは加熱や塩蔵でもほとんど分解されない。激しい下痢・嘔吐、消化管出血性炎症によって死亡する可能性があり、御三家ほどではないが誤食のしやすさとそれなりに高い毒性から危険な毒キノコと言える。

www.mhlw.go.jp

https://www.fsc.go.jp/sonota/haz_tukiyo.pdf 

ドクササコ

 名前からして毒とついている誤食がそれなりにあるキノコ。傘の中央部分がくぼんでいるのでまだ見分けがつきやすい・・・のか?これも死亡例あり。

 地方によっては「ヤケドタケ」などとも呼ばれ、食べると手足などの体の末端部分がやけどを負ったように赤く腫れ上がり、1ヶ月以上激痛が続く。消化器系への作用は無いらしいが、1ヶ月以上24時間絶え間なく走る激痛は相当な精神的苦痛でありそれで自殺する場合もある。あるいは患部は冷やせば症状が緩和されると言うのだが、冷やすために水につけた結果、そこから感染症を併発してそれで死亡するという例もある。

www.mhlw.go.jp

余談:白いキノコでも

 白いキノコ=絶対に毒、という訳でもない。オニフスベは白くて丸い得体の知れないようなキノコだが食べられる。ただし、成長するとアンモニア臭がキツくなるので中身が白い幼菌時しか食べられないらしい。味は「不味くもないが美味しくもない」とか。まあ、見た目からそんな感じはする。

kinoco-zukan.net

 キノコ以外に関しても、知識なくその辺のものを食べるのはかなりの危険が伴う。ウシガエルやザリガニ、ナメクジまで調理して食べるYouTuberが世の中にはいるが、それは調理方法を含めた事前の知識あってこそのものであって、素人がうかつに手を出すべきではない。ふざけてナメクジを食べた男が広東住血線虫症によって死亡した例もある。

www.huffingtonpost.jp

 キノコは普段から食べ慣れた食材であるし、キノコ狩りという言葉もあるくらいなので被害に遭いやすい。本当の被害者は勝手に引っこ抜かれて食べられるキノコなのだが。

― いつから"狩る"側だと錯覚していた・・・?