件の潜水艇事故をメディアは面白おかしく報じた。その中でネット記事やいわゆるまとめ記事でも、潜水艇の操作がゲームのコントローラで行われていた事が取り上げられた。が、ゲーム機のコントローラは割と軍事目的でも広く使われている。
特に若い世代に親しみがあるXboxのコントローラは流用されることが多い。あらゆるタイプのゲームに対応できるだけのインターフェース、人間工学的に親しみやすいデザイン、操作性は決してバカに出来るものではない。それでも名目だけ見て「ゲームのコントローラかよ」と侮る人間はいるのだろうが。
件の潜水艇を見る限り、問題は操縦がコントローラだのというレベルでは無いのだが。前川喜平氏がしんかい6500で救援がどうのと炎上マーケティング的な発言をして総ツッコミを食らっていたが、その流れでしんかい6500と例の潜水艇を比較してみると本当にヤバいなと言うか、そりゃ実物見てキャンセルする人も出て来るわなという感じ。3,500万円払ってこれとは随分と高い葬儀費用だ。
実物の写真を見比べてみると、タイタンはちょっと頑張った日曜大工レベル。なおかつ一番水が入りそうな窓がなかなか広い。しんかい6500の窓は水圧に耐えるために最低限である。
深海救難艇DSRV
しんかい6500はそもそも救難用途に作られたものでは無いので、今回の事故のような用途には使用できない。まず輸送などの時間を合わせれば30時間のタイムリミットを超えることは明らか。いくら何でも前川氏のような元官僚がそんな事すら分かっていないとは思えず、例の発言はただ単に注目を集めたかっただけ、忘れられたくなかっただけではないか。そもそも強度不足で圧壊したのでそのタイムリミット自体が無かった訳だが。
それはそれとして、潜水艦にも救難艇が無い訳ではない。DSRV, Deep Submergence Rescue Vehicleと呼ばれる。自衛隊も装備している。
自衛隊などの潜水艦を保有する軍隊においては、万が一の事故に備えてこうした救難艇を備えている。もし事故があって海底に沈んでも、助けに来てくれる手段が見込めるのと見込めないのとでは隊員の安心感が違うからである。
ただし、潜水艦事故そのものがそう頻度がある訳でもない上にそれ専用の設計、運用となるとなかなかお金がかかるようで、NATO加盟国ではNSRSという機種が共同運用されている。自衛隊も装備しているが2隻(ちよだ、ちはや)しかない*1。中国はイギリス製LR5という機種を発展させたものを配備している。
救助方法は大体共通で、小型潜水艇で下部のドッキング用ハッチを沈んだ潜水艇と繋ぎ、15名程度を乗せて浮上、減圧室に送る。乗員が多い潜水艦での救助は何度も往復する必要があり、救援対象を発見するためには支援が必須。小型なので残骸の引き上げなどは不向きなものが多いようだ。
タイタンに乗る:意味)不幸があった場所に冷やかしに行って死ぬこと
*1:「しかない」と書いたがそもそも持てない国もあるくらいなので恵まれている部類。海洋国家なので