立花氏がアップロードした元県民局長のPC画面とされるものについて

　N国党、立花氏が兵庫県の元県民局長のPCの中身とされる画像をアップロードし、それを信じた一部から称賛の声が上がっていたが、あのような画像はどうとでも偽造できるため信憑性が薄い。

　今回はそれを証明するため私も同様の画像を作ってみた。

　Xで一部から「偽造と断定するな」と噛みつかれたが、私は件の画像が「誰でも偽造できる程度のもの」と指摘した訳で、偽造されたものと断定した訳ではない。この記事でもあくまで偽造であると断定はしない。無礼なリプライを送って来る奴は日本語解釈にも問題があると見える。日本語検定N3でも受けろ。

そもそも論として

　件の画像は自死した元県民局長の不倫の証拠といった感じだが、兵庫県知事選挙の目的がいつの間にか「斎藤元彦氏の知事としての資質を問う」から「元県民局長のスキャンダルとそれに関連したゴシップ」にすり替えられた感がある。実際にどちらが悪いか安易に断定は出来ないが、少なくとも斎藤知事には斎藤知事の問題があったことを忘れてはならない。「再当選したから全てチャラ」は無理。

　これに関して詳細な事実整理は以下の記事が詳しい。簡単に要約すれば

元県民局長はパワハラ問題を含むいくつかの内容を手紙で告発したが、公益通報の対象となり得る内容に乏しかった（公益通報者として保護するべきかどうかに疑義があった）
公益通報者として扱うか議論の余地があったとはいえ、斎藤知事による犯人探しと懲戒処分によって元県民局長が自殺に追い込まれた可能性は否定できない
自殺の原因がこの斎藤知事の対応にあることを否定するために片山前副知事が元県民局長の不倫問題を持ち出した
告発文書の内容と本質的に無関係である不倫のスキャンダルが告発文書の信頼性と結びつけて語られ、「実は元県民局長の方が悪かった」というストーリーが作られていった
「パワハラによって自殺した」と言うと県民局長以外へのパワハラ問題と混同されやすいので適切ではない(懲戒処分等をパワハラと見なすなら「パワハラ自殺」と言えなくもない)

news.yahoo.co.jp

toyokeizai.net

また立花氏は「元局長は10年間に10人と不倫していた」とも主張した。(中略）

だがこの「10人」が根拠のないものであることを、後に立花氏は告白している。

「政見放送で“10年”と言うべきところを“10人”と（口が）ひっかかって、そのまま10人と言っちゃったみたい」

　上の記事、4ページより抜粋。

　ところで、こんないい加減なストーリー作りをしている人が「これが元県民局長の不倫の証拠です」と程度の低い画像を上げたところでどう信用せよと言うのか。無理がある。立花氏をどこまで信用して良い人間だと思うのかは個人差があるだろうが、私はそこまで盲目的に信用することが出来ない。

www.asahi.com

　というか、問題が明るみに出る前に公益通報の犯人探しで元県民局長を特定し、斎藤知事側が元県民局長のUSBメモリーやパソコンを没収していたのではなかったか。であればその時点で斎藤知事側が元県民局長に不利なように何らかの細工をすることも可能な訳で、没収されたパソコンから何が出て来ようと不倫自殺説を肯定するに足るものとは言えないのでは。

　それにしてもまあ、不倫というのは日本においてかくも大罪なのだなと思う。何せ自殺の原因にも、パワハラをはじめ複数の問題の告発について信憑性を完全に毀損させる理由にもなるのだから。自民党の裏金問題など可愛いものだ。悪い意味で日本人の国民性を垣間見た気がする。絶好のタイミングで不倫問題を報じられて自殺していない玉木代表は大したものだ。

問題の画像

　まず立花氏が上げた「元県民局長のPCの中身」とされる画像を以下に示す。まずこの時点でなぜ実質的に関係がない立花氏がこのような画像を入手し得るのか、何の権限があって捜査・公開しているのかが疑問。

　これが実際に元県民局長のPCの中身なのか真偽は分からないが、ぱっと見てそれっぽい画像というだけでファイルの中身などの画像はない。いずれも変にトリミングされており、それを画像表示ソフトで表示させてスマホで直撮りしたような形になっているのだが、なぜこうした画像のスクリーンショットそのままではないのか。

　同じような画像を作ろうとする上で気になったのはこの画像、赤枠で囲った部分。フォルダの日付が不自然に途中から消えている。1枚目の写真(フォルダのみが映っているもの)も不自然に日付が「2024/」だけ。

　「プライバシーに配慮して中身を少しずつ公開する」といった話も見かけたが、勝手にこのような画像を公開しておいてプライバシーに配慮とは便利なものだ。そういって真偽を確認できないギリギリを攻めれば信じる者もいるのだろう。

私が再現して作った画像

　同じような内容をパソコン内で再現し、同じように直撮りして編集した画像を以下に示す。フェイク画像として再利用されないように透かしも入れてある。

　ちなみに私のPCに一太郎は入っていない。適当に別のファイルをコピーして拡張子を手動で変えてやればソフトが入っていなくともそれっぽいファイルは作れる。拡張子の表示が一太郎のもののみでofficeのものは表示されていないのは、ファイル表示設定が「登録されている拡張子は表示しない」になっているため。裏を返せば画面がこのように表示されるパソコンに一太郎は入っていない可能性が高い。一太郎ファイルにはそれ用のアイコンがちゃんとある。

　一太郎は公務員が好んで使うのでその関連ファイルがある＝信憑性が高いと判断する人が多いようだが、「公務員が一太郎を好んで使う」ということが知られている時点でそこまで推察するに足る要素ではない。なお、一太郎は今でも販売されている。公務員でなくとも家電量販店でパッケージくらい見たことがある人もいるのでは(私がそうなのだが)。一部の人が言うほどマニアックなソフトでも無い。

　話を戻すが更新日時として表示されている日付も３つくらいのファイルのそれから合成してあるだけで、実際にこの日付に更新/作成したファイルは私のPCには無い。こんな全てのファイルが１つの日付に統一されたような画面でも、「PCに復旧をかけた時の日付かな？」と都合の良い解釈をしてもらえるので楽なものである。

　同じような画像を再現する上で個人的に気になったのは、フォルダ内が公私混同されていること。これも画像を信じる/信じないで解釈が分かれると思うが、私ならたとえ仕事用PCで私的なことをするとしてもフォルダごと分ける。でなければ誰かと一緒に関連ファイルを見る/誰かにフォルダ内を見せる時に危険だから。

　本物だと信じる側とすれば「公私混同甚だしいだらしのない奴」と評価できるので非常に都合が良い。

　また、「智子への手紙」などのファイル名に日付と思しき数字が付いているが、「270104終わりについて」のように日付としての解釈が難しい。2027年な訳が無いので和暦だとして、平成27年は2015年＝9年前である。9年前から終わりについて考えていた・・・？なお、斎藤元彦知事が知事についたのは2021年8月である。

　日付っぽい数字も2桁の場合があれば6桁の場合、ついていない場合があり中途半端。几帳面に日付をつける人間であればこのようなことはしない。裏を返せば「だらしない人間だった」という印象を強化することが出来る訳だが。

　それと、「私なら」の話だが「Hな語録集」と「クーデター顛末記」は同じフォルダには入れない。カオス過ぎるしいかにも過ぎる。クーデター企てる奴が業務用PCだか何だか知らんPCに「クーデター顛末記」って残すか？もし本物だったら一周回って面白いが。

　それと、「10年間で10人と不倫していた」と言う割には随分と智子さん一筋なようだ。口が滑った分も出さなくて良いのだろうか。

　ちなみにスクリーンショットそのままの場合はこのようになる。画面をカメラで撮影するよりはいかにも電子的でキレイな画面で、このままでは編集しやすい＝加工されている可能性が高いイメージを与えてしまう。

　なので編集した画像をわざわざスマホなどのカメラで撮って「今まさにPCに表示されている画面を写してますよ」、的な画にするのが詐欺の常套手段。件の画像がそうであると断言はしないが、手法として似たものを感じる。実際それで信じてしまう人間がいるので侮れない。

　画像が妙に荒かったりするのもやましい事がある画像あるある。多少加工してもサイズを落とす、画質を下げる＝ノイズを多くすれば痕跡を誤魔化しやすい。スマホでもキレイな写真が撮れるこの時代、一昔前のガラケー程度の画質は不自然。

結論として

　あの程度の画像で何らかの主張を信じて拡散するのは愚かである。口座残高が映っている画面の写真、札束の写真を信じて詐欺に引っかかる人間と同レベル。生成AIも発達して本当に真偽が分からないような情報が飛び交う時代、偽の情報に対する耐性、ネットの情報はまず疑うクセをつけなければならない。マスコミだけを信じるのも危険だが、ネットの情報だけを信じるのも危険。

　念のため書いておくが私はマスコミを信じろとは言わない。「マスコミは偏っていてネットの方が正しいんだ」というのはある面では理があるだろう。しかし全面的にネットの情報が正しい訳ではない。「どちらかを信じる代わりに一方は信じない」といった二者択一的な思考はやめるべき。ネットの方がもっと偏った情報が多いのでは。

信じる側の意見について

「立花氏が画像を偽造する意味がない」→元県民局長の自殺の原因は不倫であるというストーリーの補強に役立つので無意味ではない。

　「立花氏の上げた画像が本物かどうかは県民局長本人のパソコンと照合して見るしかない」→そうだね、それが出来るまでそれらを本物扱いして拡散することは避けた方が良いね。

　「立花氏の上げた画像が偽物かどうかは偽物だと指摘する側が証明する必要がある」→偽造を疑われるような程度の低い画像を知名度を利用して発信し、信者に拡散させることが悪質なのであってまずそれをやめるべき。今回、私が同様の画像を作成できた時点で件の画像に信憑性が生まれないことはお分かりだろう。あんなもん誰でも作れる。