ヤマネコ目線

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イギリスでベーシックインカムが試験導入された件

 GIGAZINEの記事でこういうものを見かけた。

gigazine.net

 なんと月28万円ものベーシックインカムを試験導入するそうだ。普通に羨ましい。そう、そこだけを見れば。

注意すべき点

 よく読むとボランティアの中からランダムに選ばれた30名を対象に行われます。対照群として、ベーシックインカムが支給されないグループも設けられます。」、とある。イギリス全体で導入される訳ではなく、あくまで試験的に2年間限定、かつ30人だけの支給に留まる見込み。ベーシックインカムの効果やかかる費用等を探るためには十分と言えるのだろうか。

 これまではフィンランドで失業者2,000人を対象とした実験なども行われている。今さら30人程度を対象とした実験にどこまで意義があるのか疑問である。

gigazine.net

 なお、額面こそ日本人の感覚からしてなかなかなものだがイギリスは今、消費者物価指数がかなり上がっている。

newsdig.tbs.co.jp

 それに加えイギリスの平均年収は30,000ポンドほどなので、月額1,600ポンド×12では約20,000ポンドと微妙に平均には届かない。平均はあくまで平均だが。月額28万円という数字は1,600ポンド×175円/ポンドの為替レートで概算したものであることにも注意が必要だろう。何にせよ、現地では日本国内の感覚でいう所の「28万円」とはまた感覚が違うだろう。それでも前に竹中平蔵がテレビで言っていた月額7万円ぽっちよりはかなりマシだが。

日本におけるベーシックインカム

 前も書いたが、日本においてもベーシックインカム導入を目指そうとする動きがある。問題はそれを推進しているメンツで、まず竹中平蔵が推進している時点で嫌な予感しかしない。オリンピックが汚い金の祭典であったように、欧米で生まれたキレイなモノが日本では利権まみれの汚物に変わり果ててしまう。そんな事ならば下手な制度は導入しないに越したことはない。

 特に今のこの国、少子化対策も経済対策も分かっている人間がおらず、ただ国民への負担を強いるだけ、税金を無駄にし続けるだけのこの国に、ベーシックインカムの本来目指すべき場所をそのまま目指すことが出来るとはとても思えない。

 そもそも財源をどうするのかが一番の問題だ。学習院のこの論文では月額10万円を支給する場合の費用を年間151兆円としている。これは既に日本の国家予算を超えている。

https://www.gakushuin.ac.jp/univ/eco/gakkai/pdf_files/keizai_ronsyuu/contents/contents2020/5704/5704suzuki/5704suzuki.pdf

 あくまで試算は試算だが、日本の人口は約1.2億人である。単純に10万をかければ約12兆円。それがなぜか日本政府の手にかかれば予算は10倍まで膨れ上がる。人件費を加味しても看過できないレベルで割に合わない。

 そして年間100兆円を超える予算をどうやって捻出するのかという話になる。既存のあらゆるセーフティネット社会保障を切り崩してその予算を充てるのである。考え方としては「月10万円無条件であげるから、健康保険とか年金とか無くてもやってけるよね。支払えるよね」という感じ。それが許されて良いのだろうか。

 論文中で代替財源として切り崩される可能性のあるものとして挙げられているのは

あたり。これらに加えて削られる社会保障はさらに増える可能性が高いと思われる。何故なら試算はあくまで試算と書いたが、日本政府のやる事は試算から数字がどんどん膨らむ可能性が高いからだ。そんな事例は地方でもどこでも腐るほどある。東京五輪だって当初予算は7,000億円であったが、終わってみれば1兆7,000億円だった。コンパクトな五輪などと言って当初から低めに予算を見積もっていたとはいえ、実に1兆円も増えたことになる。

 結局、無条件に月10万円ぽっちを貰えるようになっても、代わりに様々なものが減らされる。加えて物価高騰、増税社会保険料の引き上げが続く中では、10万円ぽっちは無いよりマシ程度。その上、本当に試算されている予算で済むかどうかすら怪しい。ひょっとすれば削られる社会保障はさらに増え、支給されるのは月額5万円、なんてこともありえなくは無いだろう。消費税などの負担を加味すれば、実質的な支給額はさらに目減りする。

 それならば既存のセーフティネット社会保障を存続させ、運用をより効率化する方がまだマシではないか。竹中平蔵ベーシックインカムを推進する一部の連中はあえてその道を外し、既存のセーフティネット社会保障をも自分自身の私腹を肥やす材料にしようとしている。

下準備は既に進んでいる?

 先に代替財源として扶養控除の廃止を挙げたが、既に異次元の少子化対策とやらの財源のためとして、扶養控除廃止の話が出て来ている。

news.yahoo.co.jp

 ベーシックインカムが導入されれば子ども手当は廃止されるので、扶養控除廃止によって子ども予算倍増に充てられた予算は、そのままスライドでベーシックインカムの予算として充てられるだろう。

 また、様々な不祥事がありながらも強引に推し進めるマイナンバーカード、預金口座の紐づけも、ベーシックインカム導入への布石に見えて来なくもない。陰謀論めいた話になってしまったが、後でこれがやりたかったのか、と気づいた時には手遅れなので、先を読んでおくことも重要である。特に日本の官僚や政治家は、まともな経済政策1つ取れないくせにそうした厭らしい算段は一級である。どこかで止めなければ、今以上に好き放題なことをされてしまう。一有権者としてそれは許せない。