ヤマネコ目線

大体独り言、たまに写真その他、レビュー等

SCORNをプレイして

ネタバレ要素を含みます

 んにゃぴ、よく分かんなかったです・・・と言うのは簡単だが頑張って設定画は読んだので少し書いておく。未プレイの方はYouTubeに動画あるから見れば良いと思います。グロ耐性無いとキツいけど。

テーマは何なのか

 目に入るもの全てがグロテスクというか”異様”なSCORNの世界だが、その根底にあるのは「異星人の世界を探検してみよう☆」ではなく我々の世界が「生命(性)と科学技術の融合」という形で極限まで延長された世界の探究であるらしい。設定画の説明によればその大前提があり、そこに3つのテーマを加えてSCORNの世界観は作られている。はいそこ、何だかんだで理由つけてグロいもの作りたいだけとか言わない。

 ここから色々と設定画の説明文で読んだ内容を交えながら考察もどきを垂れ流すが、最初に書いておく。SCORNには明確でスッキリと何かが伝わるといったものは無い。ストーリーテリングも無い。憶測だが、ゲームとして完成させるために妥協されている部分もある。ただ世界観として面白いものがあることは間違い無いので、それを楽しむためのゲームだと思う。

 まず設定画を読むに一番影響を受けているのは、H.R.ギーガーに違い無いと思われる。主人公のデザインは「スペースジョッキー」からインスピレーションを得ているし、そも「生(性)と科学技術の融合」はギーガーが描き続けたテーマでもある。最初の方で「人々はゼノモーフ*1ばかり好きだが、彼が作品に込めた本当の思いは理解されていない。このゲームを通じてその思いを、同じ世界を探索したい」、というような事が書かれている。ギーガーが作品に込めた思いが本当にそれであったかは正直、私には分からない。が、SCORNはそうした思いを前提として作られている。

主人公のデザイン画

 その上で、SCORNの世界観にある3つのテーマは

▶「私達が身体を持つことの意味、身体と世界との繋がり」

▶「人間性と自己の喪失」

▶「生まれ変わり」

 とされている。主人公のコアテーマは「エントロピー」。正直いろいろ欲張り過ぎな気もするし、作る側もそうしたテーマすべてをプレイヤーに伝わる形で表現し切れているとは思えない。とはいえそうしたテーマは実際にゲーム内に反映されてもいる。

 たとえば一人称視点を採用しているのは、それが現実の人間の視界に近いから=プレイヤーキャラクターに起こることが自分自身に起きていることと思いやすいから。視点操作で下を向くと、大抵のゲームでは見えない”自分の身体”が見えるのはそれをより意識させるためである。あまりゲームに馴染みのない人は知らないと思うが、一人称視点のゲームで自分の身体が見えるのは基本、腕と足くらいなものである。それが「自分と世界とのつながり」をどこまで意識させる効果があるかは疑問だが。とはいえ主人公が人間っぽいが実は人間ではないというのは面白いし、意識させられる点ではある。

 「人間性と自己の喪失」については2番目の主人公が途中、パラサイトと呼ばれる寄生生物と化した1番目の主人公に寄生され、侵食され、どんどん*2人間離れしていくことで表現されている。ラストに至る旅路の中ではたびたびパラサイトが主人公の身体を傷つけ、出血させ、その度に”他人”が自分に寄生している状況が意識させられる。それは不定期であり、制作側はそれによって「自己と他人の境界線がどこで来るのか」を意識させたかったとしている。最終的に主人公は完全に身体の制御を失い、パラサイトと一体となることで自己を喪失する。啓蒙のパラメータが低いので、私にはそれで何を伝えたいのかが分からない・・・。救いのないラストであったことだけは確実と思われる。

 一部の考察では1番目(寄生体)の主人公を精子、2番目の主人公を卵子、その2人のラストを着床のメタファーだとするものもあるが、だとすれば2番目の主人公が女性型でない理由が分からない。また、アートブックにはラストの状態が「腐敗した牢獄に閉じ込められている様な」と表現されており、設定画のキャプションにも「精子」「卵子」といった単語は欠片も登場しない。先に述べたテーマからしても生殖メタファー節は微妙。なお、主人公の種族が最初に生まれ出て来る時はなぜか無性生殖であり、”創生の壁(Genesis Wall)”と呼ばれる壁から生まれて来る。

創生の壁 アートブックより

 3番目のテーマ「生まれ変わり」については、設定画を見るに様々な構想があったことがうかがえる。単なる生殖による生命のバトンタッチではなく、肉体から意識を開放させて新たな器へと移し替え、その器によって新たな可能性を切り開くというようなイメージ。それはある種の「自己の喪失」でもあり、「人間性の喪失」でもあり、「生(性)と科学技術の融合」によってもたらされる究極の技術であるようにも思う。いわば「電脳化して永遠の命を~」を生命科学的に実現する技術、と捉えるべきか。

 最終的に行き着く場所「ポリス(都市)」には主人公と同じ種族がおS◯Xに励む像がたくさんあるのだが、彼らはそうした行為をただの生殖と見なさず、「生まれ変わり」をする前に命をつなぐ儀式であると認識していたのかも知れない。これまた設定画のキャプションからの話になるのだが、主人公の種族は意識を神聖視し、肉体には何の価値も見出さないという価値観らしいので、やることさっさとやって肉体からさっさと意識を開放し新しい自分へ~といった感じだろうか。

アートブックより

 上図:意識を移し替えるための肉体のアイデア例。4つ足のナニか。

 以下、考察を交えながらスクリーンショット(ゲーム画面そのままのキャプチャ画像)を少し貼る。

 ドクロのようにも見える機械。設定画によればこれはプレス機で、培養された?モールドマンという人型の生物を生きたまま潰し、乾燥させ、その死体を何らかの形で再利用していたらしい。

 モールドマンは卵状の殻に入っているのだが、その殻を輸送するための機械のようなものも見られる。培養から屠殺まで工業的に行われている世界観のようだ。

 骨と肉で出来た柱状のものがある何かの培養部屋。モールドマンの屠殺場からつながっているので、ひょっとすると死体を別の何かに作り変えるための工場なのかも知れない。

 ヒューマノイドの培養ポッド。SCORNの世界では赤く光る液体が生命にエネルギーをもたらすようで、卵巣とも果実とも見えるポッドにそうした液体が注ぎ込まれている。にしても、最初に生まれる時は”創生の壁”から無性生殖で誕生し、その後は有性生殖だか培養だかとはなかなかに謎。まあ、リアルでもどっちも出来る生き物?はいるが。

 花びら状のものが開いたところ。ヒューマノイドは成体になってから出て来るらしい。このあと自力で出てきて力尽きるので特に絡みは無い。身分証みたいなのと回復薬・弾薬ポーチ(生きてる)さえ頂ければ用ナシだぜ

 しばらく進んだ後。”クレーターの怪物”の巣と化した建物内部。血管のように見えるのは、怪物が外へ這い出すために通った後の粘液的なものらしい。

 ”クレーターの怪物”のいる建屋内部。右の白いのが怪物から生まれた子どもたち。無数の怪物がところどころで繋がり、橋の形をつくったまま絶命している。絶命していると思いきや分離して襲いかかって来ることもあるが。

 最下層にいる白い皮膚のある巨大な肉塊、”クレーターの怪物”の女王。分かりづらいが腕はあるし、目の部分が皮膚で覆われた顎の無い人間のような顔をしている。設定画によれば、これもヒューマノイド同じく”創生の壁”から生まれ出でたモノらしい。

 クイーンのいるすぐ下付近にあった謎のカプセル状の容器(?)。この世界では生命エネルギーを液体として輸送可能なので、ひょっとすると主人公の種族は滅びる前、クイーンとそこから生まれるものから生命エネルギーを搾取、輸送していたのかも知れない。

 クイーンとその眷属の繁殖が手に負えなくなって、というある種バイオハザード的な要素で文明が滅びたのか、単に制御する者が居なくなったから施設がダンジョン化したのかは不明。戦った末に絶命したような死体は無いので後者なのか、それとも”食べてキレイにされた”だけか・・・。設定画のキャプションには「永遠に汚染された~」という文言もあったので、生物版原発事故のような感じもする。

 クイーンのいる施設から真上に上がった場所、ポリス(都市)へ至る線路のような場所には、先ほどの謎容器を運ぶための貨車のようなものが存在する。

 先ほどの線路を廃棄された電車っぽい何かに乗って進むと、その先に見えてくるどこか神聖な雰囲気の建物、ポリス(都市)。前述したように至るところにおS◯X像や性器を強調したようなポージング?の像などがある。BGMも少し神聖な感じのものに変わる。

 妊婦像。腹は赤い液体で満たされており、ただの像のように見えて先に貼ったようなヒューマノイド培養ポッドのような構造も見られる。この像に生命エネルギーの液体を満たし、ヒューマノイドを培養していたのだろうか。

 少し下側から見たポリス。建物自体も古代の神殿を思わせる作りであり、これまであまり見られなかった直線(に近い)構造や三角形のトラス構造などが意識されている。ただ、ここにあるものは我々の感覚からすれば”神聖”とは程遠い。

 搾精&セルフハラキリショーの舞台。詳しくはプレイ動画でも見てもらえば分かる。主人公が阿修羅像のような場所にある椅子(と言うか拘束具)に腰かけるとなぜか搾精され、そのまま目の前の阿修羅像に腹を切り裂かれ、頭蓋骨を切り取られて上のシナプス状組織に神経が接続される。

 接続後、主人公(プレイヤー)の意識は別の身体に移る(それも二人を切り替えて操作する)。ただ、それが「生まれ変わり」のためのプロセスなのか何なのかイマイチ不明。最終的に意識がもとの身体に戻るので。

*1:いわゆる映画のエイリアン

*2:ヒューマノイドとしての形を失うという意味の