ヤマネコ目線

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スマホの画質が一眼を超える日

 書き散らし。日経XTECHに下のような記事が掲載されている。

xtech.nikkei.com

SSS、ソニーセミコンダクタソリューションズの社長、清水氏いわく、ここ数年以内に静止画ではスマホカメラが一眼の画質を超える見込み。らしい。

「一眼」と一口に言えど

 言葉を額面通りに捉えればなかなか大きく出たな、という感じにも思えるが、一眼と言ってもいろいろある。まさかここで引き合いに出しているのがフルサイズ一眼とは私は思わない。マイクロフォーサーズ、あるいはAPS-Cあたりの一眼だろう。現時点ではスマホカメラの画質は一眼に追いついていない。そこは"まだ"という認識で合っていると思う。「スマホでも一眼と遜色ない画質」と言えるのは、一眼カメラを使った事が無い人か宣伝で書いている人だけである。

 私はAPS-C機とフルサイズ機を持っているが、前からAPS-C機の画質には不満があった。価格帯が価格帯なのでレンズの質の問題もあるが、室内や少し暗めの屋外では「スマホよりは綺麗なんだけどなあ・・・」と言う感じ。望遠では流石に明らかスマホより綺麗な写真が撮れるものの、広角から標準域では現時点でもそこまで大きな差をつけられていないように思う。

 記事では今後の方針としてスマホカメラの大口径化、2層トランジスタ画素やAIで一眼画質を超えるとしており、これらを駆使すれば追いつく追い越す事は確かに可能なのだろう。

 ただ大口径化と言ってもスマホに積めるセンサーサイズはせいぜいマイクロフォーサーズの大きさだと思うので、カメラの複眼化とどうバランスを取るのかは気になるところ。レンズの大きさにも限界がある。

 記事内のイラストを見ると複眼レンズそれぞれのイメージセンサーからの信号を、1つの写真にまとめる構想も見られる。それが出来ればセンサーサイズは仮想的に大きく出来るが、焦点距離の異なるレンズが固定された複数のセンサーでどこまでの事が出来るのかは疑問。深度センサーを組み合わせ、奥の方は望遠レンズの信号を、手前の方は広角レンズの信号を、という感じでそれぞれのレンズのスイート・スポットだけ抜き出し合成、という感じなのだろうが、どのみち使用できるセンサーの大きさには限界がある事に変わりはない。高画素化と2層トランジスタによる高Qs(高信号量)を駆使しても、物理的な壁を超える事は出来ない。特に2層トランジスタ技術スマホで使えるなら一眼でも使える訳で、そこが特段、有利に働くとは思えない。

 AIによる補正は少し曲者で、今現在もスマホカメラの「撮って出し」は本当の意味での撮って出しではない。一眼でも歪曲補正や周辺減光などの補正はしているが、スマホカメラに至ってはより解像感が出るように輪郭を強調するような処理までしているので、一眼の撮って出しと単純に比較するのは難しいように思う。そうでなくともスマホの小さい画面は誤魔化しが効きやすい。ちゃんとした27インチくらいのモニターで見れば画質の違いは一目瞭然の筈だが、パソコンすら持っていない人が増える中ではスマホ画質でも通用するようになるのだろう。あまりフェアな戦いにはなっていない気がする。

一眼カメラは消えるか

 これに関しては前々から「消えはしないが二極化する」と私は思っていて、「スマホカメラ」か「フルサイズ以上」の二極化が進むと考えている。

 写真は光の記録である。そうである以上、物理的により多くの光を集め、損失が少ないまま集光し、より多くの光を記録できるセンサーがある方が画質の面では絶対的に有利。これは物理的な壁であるので基本的に超えられないし、いくら信号技術が発達してもその技術が一眼でも使える以上はその差が縮まらない。なので少なくともスマホに搭載できないレベルのセンサーサイズ、レンズを持つカメラは生き残る。そうでないものは消えはしないまでも衰退して行く。

 そこを考えるとAPS-Cまでは立場が怪しいと感じていて、というのもAPS-C機の画質は冒頭で述べたように実際使ってみて微妙に感じたのと、価格帯や購買層の問題がある。画質は良く言えば「スマホより確かに上」なのだが、悪く言えば「スマホと別に10万15万出して買う価値があるかは微妙」。価格帯も初心者向けで財布に優しいのは良いが、裏を返せば値段なりの品質でしかない。特にレンズは品質と価格が比例する。購買層はビギナーが多いがスマホに対抗するために性能やレンズ品質を上げれば高価格化は避けられず、そうなると値段の時点で挫折する層が増える。もし一眼を買うとして、同じような値段であれば廉価版のフルサイズ機の方が好まれるようになるのでは、と私は思う。

 一眼カメラには瞳AFや被写体自動認識などの強みも今のところあるが、それらは画質に直接的に影響しない。撮影において便利ではあるし、AFを正確に合わせられるのは良い事ではあるが、最終的な評価が画質に置かれる以上はそれが差にはなり得ない。SONYはαで培ったAF技術をスマホに投入しているし、Canonがそのあたりでどう出てくるか個人的に気にはなっている。

カメラメーカーの将来

 極端な話、これからのカメラ業界は今まで以上に苦しい。なのでSONYのようにスマホとの上手な共存、センサーやAF技術の提供、スマホ向けレンズで儲けながら本業を続ける事が求められる。ひょっとしたらCanonスマホ用外付けレンズなども登場するかも知れない。というかもうCanonスマホ作れよ。スマホと共存する一方でフルサイズあるいはそれ以上のセンサーサイズの枠の中で入門機と上級者、プロ向けのラインナップが揃えられて行くのだろう。

 一応書いておくとAPS-C機は完全に消えるとは思っていない。望遠の域ではまだまだ画質面で有利。ただそれだけでは厳しいという話。