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AV禁止は何を生むか

 立憲民主党がAV(アダルトビデオ)禁止の法律制定を打ち出した。「性行為を伴う」AVの禁止が主眼。

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AV禁止は何を生むか

 私がこれに関連して真っ先に思い浮かんだのは「禁酒法」である。アメリカでの禁酒法の成立過程と今回の立憲民主党の話は全く異なるが、もたらす結果はおそらく似たようなものとなるだろう。

 AV業界に全く問題がないとは言わない。しかし、AVそのものを禁止することでそれらの問題を解決しようとするのはあまりに乱暴であり、それでAV業界を潰しても性と消費に関する問題が根本的に解決することはない。ましてや「性欲」は人間の三大欲求の1つであり、その力を止めるのは容易ではない。世の中どんどん潔癖な事を言うようになって来ているが、人間が有性生殖を行う動物である以上、そこから性を切り離す事は不可能。

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もぐり酒場

 禁酒法が制定されてからアメリカでは酒が消えたかと言えば全くそんな事はなく、無許可でアルコール類を提供する「もぐり酒場」が登場した。ここで酒場と警察の癒着問題なんかもあったというのがアメリカらしい。アルコール類の消費量も増加したとされる。私の記憶が正しければ、NHK映像の世紀で隠れて酒を飲むための水筒などが紹介されていたように思う。要は酒は無くならなかった。むしろ増えさえした。

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 これがAVに置き換えてみるとどうだろうか。一般企業としてのAV製作会社は潰せても、個人単位でそういった映像を製作し、密かに売買する人間が出て来る可能性は十分にある。そこできちんとした契約や同意がなされる可能性は低く、より性的搾取とされる被害が広がる事もあり得る。業界が無くなると言うことは競合する大きな相手がいなくなるという事であり、そこに需要がある限り何らかの方法で供給が続く。禁酒法のもたらした結果は、それが今までよりも悪い形でむしろ増えさえする可能性を示している。

法律の限界

 また、禁酒法アメリ国外に対しては全くの無力であった。その結果としてアメリカ近隣諸国の醸造所が栄え、酒の密輸入も相次いだ。その国の法律はその国の中でのみ有効なので、当然の結果と言える。

 つまり日本がもしAV禁止方を制定しても、日本国外には全く無意味であるため結果として需要は世界に向けられる事になる。ましてや今はネットの時代、AVなどネットで見られる。AV製作会社が海外に事業所を置き、海外で撮影して海外サイトで配信すればもう防げない。通信を遮断する権利まで日本政府には無い訳で、もし通信そのものも遮断すると言うのならいよいよ独裁国家のようなザマになってくる。

 そうでなくとも貧しくなる一方の日本では、「パパ活」などという言葉で誤魔化された売春が横行している。性風俗も存在し、そういった場所での需要が増えるのも目に見えている。むしろそういった風潮や業界がより悪い方向へ行くだろう。

反社会的勢力の参入

 これが最も懸念すべき点だろう。アメリカのギャングは禁酒法を逆手に取り、違法なアルコール類を売って資金を得ていた。その中には有名なギャング、アル・カポネもいる。法的に禁止されているものは往々にして、反社会的勢力の商売道具となる。薬物等はそれでも禁止しておく方が社会にとって利益であるから禁止されているのであって、そのあたりはきちんと天秤にかけなければならない。

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 AVが法的に禁止されれば、そこで反社会勢力が商売を始めるのは想像に難くない。既に風俗業界のバックには反社会的勢力が確実に居る。今のAV業界とそういった勢力にどこまでの関わりがあるのか、無いのかは知らないが、その辺りの関係性は確実に悪化する。少なくともAV制作会社という大きな競合がいなくなる以上、そういった組織が参入する隙は出来る。同意がどうの契約がどうの云々以前に、借金で首が回らなくなった女を出演させて金に替えるようになるだろう。彼らからすれば「風俗かAVか」と人を金に替えるための選択肢が増える事になる。

シミュレーションをしないのだろうか

 歴史的な事実から少し考えを巡らせても、逃げ道があったり現状より事態が悪化すると思われるのは明らかで、立憲民主党の先生方はそういったシミュレーションをしないのだろうかと不思議に思う。もちろん、全ての所属議員がそれに賛同している訳でも無いのだろうが、全体としてAV禁止法を打ち出して来たという事はその風潮に逆らえる人間がいないのだろう。

 何というべきか、変に潔癖な所がますます共産党に似て来たように思う。人間はそんなに綺麗なものではない。一部の人間が言うような物凄く綺麗な理想は、人間が人間で無くならない限り不可能。性行為の売買なんてどう足掻こうがいつの時代でも形を変えて行われている。本質的には合法・非合法の問題ではない。法はあくまで法であり、ゲームの中のように世界を完璧に縛り上げることなど不可能。それを理解した上で知恵を絞り、不本意な性的消費を取り締まる手立てを考えるべき。

 「テレビや映画での殺人シーンでは実際に殺したりしない」と堤かなめ氏は述べたらしいが、殺人と性行為を同列に並べて語るのも違和感がある。確かに強姦などは魂の殺人と言えるが、そうでない場合もふくめて一括して禁止するのは道理に合わない。むしろそれであれば性犯罪の厳罰化を検討すべきである。私見だが2アウト、あるいは3アウト制にすれば良いと思っていて、1回目でGPS強制装着、2回目、3回目の再犯で強制的な去勢でもすればいい。

 立憲民主党はもう共産党と同じような方向へ舵を切って行ったんだなと個人的には思っている。つまり共産党の支持者と同じような層を取り込み、政権を取れないが野党として批判だけは出来る立場に甘んじる。決してマジョリティにはなれないが、それが楽に議員であり続けられる道。彼らの本心がどうあれ、私の目にはそう映る。本気で政権を取る気などない。なので彼らに期待すべき事はない。政権を取れないのでいくら綺麗事を並べても実現することは出来ないのだから。

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