ヤマネコ目線

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外国人実習生について農家を責めるな

 書き散らし。「責めるな」と書いたはものの、実際に私が言いたいのは「技能実習生制度について農家を責めるのは酷では」という事。中には本当に酷い扱いをしている農家も居るらしい(特にセクハラ)が、それはまあ責められても仕方ない。

日本の農業

 実家が農業、林業をしているのでその苦労は一応分かるつもりでいる。米作りはずっと手伝って来たし、昔から学校が休みの日は農林業の手伝いをさせられるのが嫌だった。まあそれは置いておいて日本の農業は大規模化かつ法人化して、売るものはブランド化して、技能実習生という奴隷を入れでもしないと儲からない、やっていけない様になっている。それはもちろん誰のせいか、一般消費者のせいでもあるし国のせいでもある。農家自体に帰すべき非がある場合もあるが、割合としては農家を取り巻く環境の悪さが大きい。

 他国は第一次産業への補助金が手厚い。むしろそれが収入のメインとさえ言える。食料自給率は安全保障に直結するからだ。AmazonPrimeVideoで見られる「ジェレミー・クラークソン 農家になる」を見ると分かりやすいが、補助金を受け取るための農薬等の保管、労働安全管理、農地管理の話が結構頻繁に出て来る。他方、私の実家ではそんな話も書類も見た事はないし、検索しても大抵出てくるものは新規参入向けの設備投資等への補助金だ。うまくやれば事業化してうまみもあるのか知らないが、日本で農業をするにおいては継続性が問題になる。

 ちなみにジェレミー・クラークソンはイギリスBBCの有名なクルマバラエティ、TopGearの元司会者で、おおよそ農業には縁のないような人物だったのだが、その氏がAmazonの後援もあるとはいえ農業、畜産業に挑む番組は結構勉強になるのでおすすめ。

 そして消費者に関する問題だが、とにかく安くないと消費者はモノを買わない。そのくせ農作物に至ってはキレイで新鮮なものを安く買いたがる。そのうえ無農薬であれば良いとか言い出す。無農薬でキレイな野菜を作るのはどれだけの苦労が必要か一回、自分でやって見れば良い。それはさておき農産物に限った話ではないが、世の中、安いものしか売れないので農家は結局、安売り合戦に参加せざるを得ない。そうなってくると当然、元から労働に見合うだけの報酬など期待出来ないのに更に収支は悪化する。となると当然、人手が欲しくても日本人は雇えない。払える時給からして求人を出すだけ無駄なレベル。そうなって来ると頼れるのは現代の奴隷制度、外国人技能実習生になって来る。

 結局、外国人実習生を使う農家が悪いのではなく、そうせざるを得ない環境も悪いと言える。全体的に見れば主に政府のせいと言えるだろう。この数十年で日本経済は衰退の一途をたどっている。消費者に余裕がないのは経済が悪いからに他ならない。補助金、一次産業の保護は多少の政策はあれどまだまだ不十分。実家が農林業をやっている私としては、もはや補助金もらったってやりたく無いけどね。

農家は何が嫌か

 余談だが私は今の実家の田畑を維持する気はない。さらさら無い。何故か。兼業農家は大体が休日に農作業をしている。ゆえに貴重な自由時間は農林業をするだけでゴリゴリ削られる。それも行楽シーズンは決まって忙しいので休みが休みらしいのは冬くらいになる。これがもうQOLを下げまくっている。かといって農林業だけで暮らしていけるだけの収入になるかと言えばまったくそんな事はない。まさに労多くして功少し。

 結婚においても不利。今どき農家の長男と言えばそれだけでもう敬遠対象である。中には物好きな者もいるか知らないが、まあそれはデメリットを知らないからというだけの話。特に田舎の農家では嫁も含めて家族は都合の良い労働力でしかない。

引退後は田舎でのんびり農業、と考えている人へ

 農業は自然との戦いである。悪天候、害獣害鳥害虫、植物特有の病気、雑草、炎天下での肉体労働、それらに打ち勝たなければ農作物というのは出来ない(作るモノにもよるが)。たとえ小さな畑で自給自足できる分だけでも、と考えていても、自然はそういった所にも容赦なく襲いかかって来る。

 イノシシや鹿などは勝手に殺す訳にもいかず、害虫は大発生すると手に負えなくなるし、炎天下の草刈りなどは逃れようがない(それも刈ったと思ったらすぐに雑草が生えてくる)。農業はのんびりなどと言う言葉とは無縁なので、もし本気で考えているならばくれぐれも慎重に検討して欲しい。